研究概要 |
1)カベオラに特異的であるとされる3つの蛋白質(イノシトール1,4,5-3燐酸レセプター様蛋白質、細胞膜カルシウムポンプ、カベオリン)の分布をヒト線維芽細胞、マウス3T3細胞、ウシ大動脈内皮細胞などを用いて検索した。固定後に界面活性剤を用いて細胞膜を可溶化する通常の方法、およびニトロセルロース膜によって細胞の上半部を剥離する方法のいずれを用いても、これら3者が全体としてほぼ同じ分布をとることが明らかになった。すなわち、大半のカベオラは同じ構成成分からなることが判明した。しかし、3者の標識が重ならない点も一部に存在し、カベオラに異種のものが存在する可能性も示唆された。 2)マウス表皮細胞株(PAM212)にGPI結合型蛋白質であるThy-1を発現させて、その分布変化について検索した。非刺激時にはThy-1は細胞膜全域に均一に分布したが、抗体によって架橋すると細胞周辺部のカベオラが密集する部位に集中した。架橋時にカベオラに集中する現象はlactosyl ceramide、ceramide tetrahexose、Forssman antigenなどのスフィンゴ糖脂質およびsphingomyelinでも見られた。またこれらの分子は、架橋時に共通のドメインを形成し、その後にカベオラに向かうことが観察された。架橋された分子のカベオラへの集中はNaN_3、N-ethylmaleimideで阻害されたが、cytochalasin D、nocodazoleなどで細胞骨格を脱重合させても観察された。この結果は、GPI結合型蛋白質やスフィンゴ脂質とカベオラとの親和性がエネルギー依存性の機構によってもたらされるものであることを示した。
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