1.我々がカベオラに局在することを見出した細胞膜蛋白質(PM-IP3R)は、小胞体のイソシトール3燐酸レセプターと構造的に類似した蛋白質である。今回の実験では、PM-IP3Rがカベオラとアクチン線維の結合に果たす役割について検討した。正常無処理時のPam212細胞ではPM-IP3Rはカベオラに局在し、アクチン線維の密集した細胞間結合部付近に高密度に分布した。サイトカラシンDを作用させた細胞では、PM-IP3Rは脱重合したアクチンの形成するスポットに一致して観察された。電顕的にはぶどうの房状に集合したカベオラにPM-IP3Rの標識が認められた。PM-IP3RはTriton X-100、octylglucosideのいずれでも可溶化されず、後者で可溶化されるカベオリンとは異なる挙動を示した。これらの結果は、カベオラとアクチン線維との結合がPM-IP3Rによって媒介されている可能性を示唆した。 2. GPI結合型蛋白質、糖脂質、スフィンゴミエリンの細胞膜上の局在を免疫組織化学的に検索した。これらの分子に対する抗体を培養細胞に作用させ、固定後に標識二次抗体を与えると、標識は細胞膜全域に一様に見られたが、氷温で一次・二次抗体を作用させた後、37℃に加温すると、標識は10〜30分後にカベオラに集中した。この際、GPI結合型蛋白質と糖脂質、あるいはGPI結合型蛋白質とスフィンゴミエリンは、まず共通のパッチを形成し、その後、共通のカベオラに移動することが観察された。またサイトカラシンDやノコダゾール存在下でもカベオラへの集中は認められた。これらの結果は、GPI結合型蛋白質、糖脂質、スフィンゴミエリンのカベオラへの集中が抗体による架橋時にのみ起こり、しかも細胞骨格に依存しないことを示した。
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