ラットの坐骨神経を損傷し、近位部のランヴィエ絞輪から出る再生芽とそれが再生軸索となってシュワン細胞あるいはシュワン細胞の基底膜に沿って遠位方向に伸びる場合の成長円錐を用いた。またこれとは別にマウスの胎児からとった脊髄神経節から培養した神経細胞をも用いた。これは知覚神経ではあるが小胞関連蛋白に関する限り、in vivo の成長円錐の場合と違いはなかった。 成長円錐が標的(骨格筋)においてシナプスを形成すると、小胞はシナプス小胞として神経の興奮によってアクティブゾーンから開口分泌されるという特殊な機能を担うようになるが、標的に達するまでの成長円錐では伸長機構が主体であると考えられる。成長円錐の形成初期から小胞関連蛋白が発現していることはこれらの小胞関連蛋白がシナプス小胞に分化する以前に、小胞と表面膜との融合機構に関与しているものと考えられる。すなわち小胞関連蛋白がシナプスのみならず広く再生神経の伸長にも関与していることが明らかとなった。 細胞内情報伝達系のひとつとして蛋白キナーゼC(PKC)の発現を調べた。PKCは損傷されていない正常な軸索内の微細管や神経細線維の集合部には少なく、細胞質部に多く存在する。再生軸索では細胞質に瀰漫生に現れるのが特徴である。特に膜に限局している所見はない。これまで調べたCa^<2+>依存型のサブタイプであるα、β、γおよびCa^<2+>非依存型サブタイプであるδ、ε、ζの6サブタイプである。強弱の差はあるがいずれも上記のような発現パターンを示した。 PKCは多くの細胞内情報伝達系に関係しているためこのように成長円錐において多くのサブタイプがあり細胞質内に広く分布しているものと考えられる。
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