本年度は所定の機器を設置し、様々のケイジド試薬をパッチクランプ法によって膵臓腺細胞の細胞内に注入し、任意の場所に紫外線を照射し、膜電流や膜容量を測定する実験を行った。実験目的に応じたケイジド試薬の選択などのノウハウを蓄積し、現在データを取り進んでいるところである。ピンホールによる活性化の場合には、紫外線強度が強いこと、カルシウムケイジド試薬へのカルシウムの負荷の度合が重要で、適切な条件のもとでは、ピンホール照射部位に限局した一過性のカルシウム上昇をイメージングで記録し、同時に2種類のカルシウム依存性チャネル電流を記録することが可能となった。その結果、予想されたように塩素チャネルの分布が非常に腺管側に多いことが確かめられたが、その分布は腺管膜より広く、むしろ分泌顆粒の存在部位にまで広がっており、溶液分泌のモデルに修正が必要なことがわかってきた。更に詳細なマッピングを現在進めている。開口放出を現す膜容量変化を紫外線照射で起こすことにも成功している。この際、カルシウム親和性が内分泌細胞著しく低い(現在20μモルと推定)こと、カルシウムを更に大きく上げないとアゴニスト作用の時に見られる速い開口放出が起きないことがわかってきた。また、この開口放出の際、zymogen granuleの大きさから予想されるような大きさの膜容量変化があまり起きない。そこで、今後、この開口放出に必要な局所カルシウム濃度の推定、分泌顆粒の同定を目的とした解析を進めている。
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