研究概要 |
リンパ系は毛細血管床における物質交換によって生じた組織液の回収路としての生理機能を有するばかりでなく,長鎖脂肪酸,脂溶性ビタミンやホルモン,免疫反応に関与するマクロファージやリンパ球の輸送など,血管系と並列に伴走する運搬路としても重要な役割を果している。最近,私共はリンパ管内皮細胞から内因性の一酸化窒素(NO)が産生・放出され,リンパ輸送機能を制御している可能性について示唆していた(Am,J,Physiol.260:H1172-H1178,1991;Am,J,Physiol.264:H1460-H1164,1993)。そこで本研究ではinducible NOを産生・放出し、炎症反応等の状況において様々な病態生理学的役割を担っているマクロファージをリンパ管平滑筋緊張との相互作用について,体系的に解析することをまず始めの研究目的とした。 その結果,ラット腹腔内に遊走したマクロファージの培養上清はイヌの摘出胸管条片に対し顕著な弛緩反応を誘起されることを見出した。この弛緩反応はNO合成阻害薬であるL‐nitro arginine methyl ester(L‐NAME)を培養液中に前放置すると有意に抑制され、NOの基質であるL‐drginineの追加処置により,L‐NAMEの阻害作用は減弱した。また,NOS酵素の阻害薬であるdexamethasoneの培養液への添加によりマクロファージ培養上清由来の弛緩反応はほぼ完全に消失した。一方,EGTAやCa^<2+>拮抗剤nifadipineの前処置を施こしてもこのマクロファージ培養上清由来の弛緩反応は何らの影響を受けなかった。 これらの結果より培養ラットマクロファージはCa^<2+>非依存性のinducible NO様物質を腹腔内に遊走した状態ですでに産生・放出し、リンパ管平滑筋を弛緩されることが判明した。
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