2年間の文部省科学研究費補助金、一般研究B(06454145)によって得られた実験結果は次のごとく要約することができる。 1.リンパ管内皮細胞培養システムの作製とリンパ管内皮細胞由来弛緩因子の解明。まず始めにイヌの胸管のリンパ管内皮細胞の培養システムを確立し、蛍光プローブを用いてCa^<2+>-トランジェントや。H-トランジェントを連続的に測定出来るシステムを作製した。その標本を用いて、生理活性物質ヒスタミンやプラディキニンの作用を調べてみると、40秒程度持続するCa^4-トランジェントの上昇とそれに付随するアシディブィケーションの発生することが確認された。このリンパ管内皮細胞の細胞内変動に付随して多量の-酸化窒素が産生・放出され、脈管平滑筋、サイクリックGMP依存性の弛緩反応の誘起されることを証明した。 2.リンパ節由来の脈管平滑筋弛緩因子の解明。サルの脈管リンパ節の被膜平滑筋は5-hydoxytryptamineによってリンパ節から産生・放出される一酸化窒素によって著名な弛緩反応の生ずることが判明した。 3.マクロファージ培養システムの確立と培養マクロファージ由来のリンパ産生・リンパ輸送制御因子の解明。ラット腹腔内に注入した滅菌生理食塩水によって誘導されたマクロファージは、その大部分が単球由来の血管透過型マクロファージであり、ED-1抗体陽性であることを証明した。この遊走マクロファージを炎症状況に相当するL-アルギニンを減少させた環境で培養するとこの細胞の誘導型の一酸化窒素合成酵素の発現が誘導され、多量の一酸化窒素を産生・放出することが確認された。さらに、この一酸化窒素の酵素誘導・産生・放出機構はグルユコルチコイドの前処置で著名に抑制され、同時にNO合成阻害剤L-NAMEでも拮抗され、L-アルギニンの追加投与でこの拮抗作用が除去されるのを確認した。
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