膵腺腺房細胞における小胞融合過程を、形態的なカルシウム領域との相関の下、画像解析および膜容量計測を用いて同定することを第一義とした。 分泌小胞の細胞膜への融合は細胞内局所でのメッセンジャー濃度変化とその速度に依存している。また分泌小胞の融合(エクソサイト-ジス)は小胞と細胞膜との空間的配置の問題を含む。膵腺腺房細胞における消化酵素開口放出を例にとると、イノシトール三リン酸受容体を介したカルシウムの上昇は分泌顆粒存在領域を始点として、腺腔側および基底外側膜へと伝播する。そうしたCa波はその途上でイオンチャネルを活性化しまた分泌小胞の融合を促進させる。分泌小胞は径約0.1μm程の細胞内構造物であり、刺激直後、最近接小胞の融合が起こり、刺激の反復あるいはCa振動に伴い順次膜近傍小胞の細胞膜への接近がはかられる。いっぽう、既に融合を終えた分泌小胞はエンドサイト-ジスにより細胞内へと回収される。局所Ca支配領域でのこうした小胞交代運動を制御する機構は、その存在を暗黙のうちに仮定されてはきたが、未だ現象としても実体としてもとらえられたことが無い。膜直下での融合自体には不要であることを示唆する結果が得られた。さらに、プライミングはカルシウム振動に追随しうることも解った。成果は現在投稿中である。こうした結果をふまえ、プライミングの部位とそのカルシウムによる制御過程を追求している。 また、炭素電極法を用いて、同標本にカルシウム依存性の分極分泌の存在も明らかとなった。
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