研究概要 |
シビレエイのナトリウムポンプβ鎖とブタのプロトンポンプβ鎖との間でキメラ体を構築し、これらをアフリカツメガエル卵母細胞中で発現させた。平成7年度は、キメラβ鎖とα鎖との会合体形成能や、できた会合体のATP分解能以外に、イオン電流の膜電位依存性を分析した。その結果、 1,β鎖の細胞質側に依存するN末端領域は、ATP分解活性に関する限り両ポンプ間で互換性があるが、イオン電流の膜電位依存性に差があり、β鎖N末端領域がイオン特異性に関与する可能性が生じたこと。 2,細胞外側に存在する最もN末端側の-S-S-ループ(L1)は両ポンプ間で互換性が低く、機能上特異的領域であることが示唆された。特にこのループ内の148位のアミノ酸残基が重要であり、ナトリウムポンプでは塩基性アミノ酸(Lys, Arg)、プロトンポンプでは疎水性アミノ酸(Phe, Leu)であること。 3,プロトンポンプβ鎖がα鎖と安定複合体を形成するには、糖鎖が全て揃っている必要があること。 などが新たに明らかになった。 なお、機能的ポロトンポンプが細胞膜へ選別輸送される機構については、これを培養細胞発現系を用いて組織化学的に追跡している過程で、さらにプロトンポンプβ鎖に特異性の高い抗血清が必要なことが判明し、新たに数種の部位特異的抗血清を作成した。これにより共焦点レーザー顕微鏡等による構造的解析が進展することが期待される。
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