研究概要 |
プロトンポンプの機能的発現に寄与するβ鎖の領域を,ナトリウムポンプβ鎖とのキメラ体を構築することにより調べた。 1.ナトリウムポンプβ鎖自体はプロトンポンプの機能的発現(ATPase活性)に無効であること。 2.プロトンポンプβ鎖のN-末端側細胞内領域をナトリウムポンプで置換したキメラ体はプロトンポンプATPase活性の発現に有効であり,従ってこの領域は両β鎖間で互換性のあること。 等が新たに明らかになった。これらの結果は,昨年度までに得られたナトリウムポンプの機能的発現に関する結果と一致した。従って両β鎖のそれぞれに固有な機能に関与する特異的領域は,膜貫通領域から細胞外領域の範囲に存在すると結論した。 これら特異的領域がプロトンポンプのapical側への選別的動員に関与する可能性を検証するために,β鎖やそのキメラ体の極性細胞(Caco2)での発現および発現産物の局在性の観察を試みた。 3.pREP9を発現ベクターとして発現プラスミドを構築して電気穿孔法でCaco2に導入した。導入したβ鎖遺伝子の発現はノザン法で確認できたが,免疫沈降法や共焦点顕微鏡観察ではプロトンポンプβ鎖の発現は観察されたが,ナトリウムポンプβ鎖では,各種抗血清を用いたにも関わらず決定的な発現を観察することができなかった。これは,極性細胞ではナトリウムポンプやプロトンポンプの翻訳が制限されるという結果(Grindstaff et al.,J.Biol.Chem.271,23211-23221,1996)と関連しているのかもしれない。
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