血管に特異的に存在する36kDa細胞外マトリックス蛋白質を介する新しいカルシウム信号伝達系について、更に、研究を発展させた。その結果、以下のごとき実績が得られた。 1. 36kDa細外マトリックス蛋白質は、いわゆるRGD配列を持ち、fibrinogen familyにも共通する配列を有する新しいタイプの細胞外マトリックス蛋白質であることが判明した。 2. 36kDa蛋白質は、Desmoplakin、cytotactinなど神経細胞の組織形成に関与する蛋白質と一次構造上の類似性を持ち、このことから血管形成の制御に本蛋白質が重要な役割を果すことが推定できた。 3. 36kDa蛋白質とCa^<2+>依存性に相互作用を持つ薬物を開発し得た。 4. 36kDa蛋白質の自己抗体が発生することによって、動脈瘤が発生する可能性があることがわかった。 以上の成果により、基礎科学的には新しい細胞外マトリックス蛋白質が血管形成に深く関与することが証明されたが、同時に本蛋白質が動脈瘤発症に関与することが見いだされ、炎症性大動脈瘤の発症機転を解明する上でも重要な手掛かりが得られた。
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