研究概要 |
白血球は、免疫アレルギー、炎症、細胞障害などに関与し、生体防御機構の中心的細胞であるばかりでなく種々の病態において重要な役割を果していることは明らかである。しかしながら、これらの病態に対する治療薬の開発は現在なお不十分な状況にある。その主な理由の一つに白血球活性化の分子機構に関する研究成果が不足しており、新しい治療薬開発のための基礎的知見が不十分であることが関係していると思われる。そこで、我々は従来より、白血球の新しい内因性活性化因子を検索してきたが、最近新しい白血球活性化因子を発見した。前年度に引き続きこの新しい白血球活性化因子の同定とその機能について詳細に検討した。その結果、新しい白血球活性化因子はカルシウム結合蛋白質のS100ファミリーに属するS100Lであることが判明した。S100L、0.1nMより有意な白血球走化性が認められ、その強さは血小板活性化因子(PAF)に相当した。さらに、S100Lをリガンドとした結合実験や好酸球活性化実験により、全く新しい受容体を介した情報伝達機構が示された。さらに、他のS100蛋白質(S100ao,S100b,S100C)等には白血球活性化作用はなく、またS100Lの作用に影響を与えなかった。このことは、S100Lに特異的な、新しい白血球活性化機構の存在が強く示唆された。
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