気道上皮由来の生理活性物質の分子薬理学的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454162
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 伊東 祐之 九州大学, 医学部, 教授 (80037506)
• 研究分担者: 平田 雅人 九州大学, 歯学部, 助教授 (60136471) ; 井上 隆司 九州大学, 医学部, 講師 (30232573)
• キーワード: 気道上皮細胞 / 生理活性物質 / 迷走神経・効果器伝達 / プロスタグランディン / 平滑筋細胞 / 収縮 / 興奮性接合部位 / 過分極因子

研究概要

i)気道上皮細胞由来の興奮性迷走神経・効果器伝達阻害因子を特定する目的で気道上皮細胞培養上清(以下培養上清)の神経因性収縮、興奮性接合部電位(EJP)に及ぼす効果を観察し、培養上清中のPGE_2をラジオイムノアッセイした。培養上清は、イヌ気管平滑筋の神経因性収縮とEJPの大きさを抑制し、抑制の強さは培養上清により異なった。さらにその抑制の強さは培養上清中のPGE_2含有量(3,1-23.8ng/ml)と相関した。そこで気道上皮細胞をインドメタシン(10^<-5>M)及びAA861存在下で培養し、培養上清の効果を観察すると、インドメタシン存在下ではPGE_2含有量は0.6ng/ml以下となりその収縮及びEJP抑制効果は消失した。すなわち気道上皮由来の興奮性迷走神経・効果器伝達の阻害因子の一つはPGE_2であると結論できる。
ii)気道上皮細胞由来の気道平滑筋細胞膜過分極因子を特定する目的で培養気道上皮細胞やその上清の気管平滑筋の静止膜電位に及ぼす効果を観察し、さらに培養上清をゲル濾過し各分画について過分極効果を観察した。単離分散した培養気道上皮細胞は2.5×10^5cells/ml以上の濃度で気管平滑筋に5〜7mVの過分極をもたらした。そこで培養上清の膜電位に及ぼす効果を観察する目的で培養上清を正常クレブス氏液で透析した後、気管平滑筋に及ぼす効果を観察した。20例の透析した培養上清のうち16例が膜過分極効果を示し(平均の膜過分極6.4±1.8mV,n=16)、4例ではこの効果は観察されなかった。対照実験としてヒトフィプロブラストの培養上清の気管膜電位に及ぼす効果を観察したが全く効果を示さなかった。次に培養上清をゲル濾過し、各分画について過分極効果を観察すると分子量一万以下の特定の分画に活性が認められた。この分画を1-arginine protease 1μg,α-chymotrypsin 1μg,pronase 10μgで25℃、12hr処理するとその活性は完全に消失した。すなわち気道平滑筋過分極因子は分子量一万以下のペプチドと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Matsumoto,K.: "Effects of epithelial cell supernatant on membrane potential and contraction of dog airway smooth muscle." Am.J,Respir.Cell Mol.Biol.10. 322-330 (1994)
• [文献書誌] Abdullah,N.A.: "Contraction and depolarization induced by fetal bovine serum in airway smooth muscle." Am.J.Physiol.266. L528-L535 (1994)
• [文献書誌] Chen,S.: "Role of cyclic AMP-induced Cl conductance in aqueous humour formation by the dog ciliary epithelium." Br.J.Pharmacol.112. 1137-1145 (1994)
• [文献書誌] Inoue,R.: "A possible role of tyrosine kinases in the regulation of muscarinic receptor-activated cation channels in guinea-pig ileum." Biochem.Biophys.Res.Commu.203. 1392-1397 (1994)
• [文献書誌] Inoue,R.: "Extracellular H^+ modulates acetylcholine-activated nonselective cation channels in guinea pig ileum." Am.J.Physiol.268. C162-C170 (1995)
• [文献書誌] Jing,R.: "Role of nitric oxide in non-adrenergic,non-cholinergic relaxation and modulation of excitatory neuroeffector transmission in cat airway." J.Physiol.483. 225-237 (1995)
• [文献書誌] Ito,Y.: "Airway Smooth Muscle Biochemical Control of Contraction and Relaxation,eds.by D.Raebum & M.A.Giembryc" Birkhauser Verlag, 153-186 (1994)
• [文献書誌] 伊東祐之: "State of Arts 1995-'98原澤直美、北村論、編" 医歯薬出版, 31-34 (1994)