研究概要 |
気道上皮細胞由来の生理活性因子を同定する目的で気道上皮細胞培養上清中の生理活性因子につき分子薬理学的検討を行った。その結果気道培養上清中にはi)興奮性神経-効果器伝達の阻害因子及びii)気道平滑筋過分極因子が存在することが明らかとなった。i)については気道培養上清中に3.1〜23.8ng/mlのプロスタグランディンE_2 (PGE_2)が存在することがラジオイムノアッセイ法により明らかとなり、高濃度(i>>10ng/ml)のPGE_2を含む培養上清はイヌ気管及び細気管支標本の神経因性収縮を完全に抑制した。さらに同一気道上皮細胞をインドメタシン存在下に培養すると培養上清中のPGE_2は著しく低下し、同時に神経因性収縮阻害効果も消失した。気道上皮細胞の培養上清は二重蔗糖隔絶法や微小電極法で記録したEJPを完全にあるいは部分的に抑制した。すなわち気道上皮由来のPGE_2は迷走神経終末に作用し節前性に興奮性神経-効果器伝達を阻害すると結論できた。次にii)については、気道上皮細胞培養上清中の平滑筋過分極因子の精製を試みた。培養上清を凍結乾燥し20倍に濃縮し最構成しゲル濾過した。分子量1〜5万の範囲で複数の活性フラクションが得られた。しかしゲル濾過によるこれらのピークなしでも膜過分極効果が観察される場合があり、従ってゲル濾過で観察されるピークと膜過分極効果は必ずしも相関しないと考えられた。そこでゲル濾過で得られた活性フラクションをさらにC_<18>逆相クロマトグラフィーにかけ、間得られたフラクションについて膜過分極活性を検討した結果、エリューションプロフィルの早い時期に出現する一つのピークにイヌ気管平滑筋の膜過分極効果が観察された。このフラクションには分子量10,000前後のペプチドが存在し、膜過分極効果は100℃による加熱やトリプシン処理により消失した。従って膜過分極因子は分子量約10,000ペプチドであると結論できた。
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