(1)太いヘンレ上行脚TALの不均一性 TALは管腔側膜の形態によってR細胞(Rough surface cell)とS細胞(Smooth surface cell)からなり、皮質部CALではR細胞が多いのに対して、髄質部MALではS細胞が多いこと明らかにした。電気生理学的手法によって基底側膜の高いコンダクタンス(HBC)と低いコンダクタンス(LBC)の2種類の細胞を区別することが出来た。これは主としてKコンダクタンスの違いによるものである。 (2)K分泌細胞とK吸収細胞 R細胞が多いCALではKの分泌が起こり、S細胞が多いMALではKの吸収が起こることから、S細胞=HBC細胞=K吸収、R細胞=LBC細胞=K分泌という図式が成り立つことを明らかにした。 (3)髄質部太いヘンレ上行脚(MAL)に対する副腎皮質ホルモンの作用 副腎摘出ラットの腎より単離したMALを潅流し、ランダムに細胞穿刺を行ったところ、HBCの性質がLBCに近づいた。この変化は糖質コルチコイドによる治療で回復したが、鉱質コルチコイドでは不変であった。また、副腎摘出群ではMALのKの再吸収能と管腔内電位が低下したが、いずれも糖質コルチコイドで回復したが、。鉱質コルチコイドは無効であった。以上より、糖質コルチコイドがHBCに作用して基底側膜のKの再吸収を亢進すると結論された。 太いヘンレ上行脚の不均一性は、尿細管でのK輸送に関連して、集合管と並んで重要な生理学的意義を持つものと考えられる。
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