研究概要 |
我々はこれまでに細胞質や赤血球に存在するCu,Zn-SODが糖化を受けると活性酸素を産生し、Cu,Zn-SOD自身の断片化とそれに伴う不活性化を起こすことを明らかにしてきた。今回はこの糖化Cu,Zn-SODから産生された活性酸素によるDNA障害について検討した。まずクローン化したDNAを糖化Cu,Zn-SODとインキュベートしたところDNAの断片化が顕著に認められた。このDNA断片化の程度は添加した各種の糖の還元力に対応していたので、タンパク質の糖化の程度を反映していることが示唆された。更に、糖化Cu,Zn-SODによるDNA断片化は種々のヒドロキシラジカルのスカベンジャーによって阻害された。従って糖化Cu,Zn-SODから産生されたヒドロキシラジカルがこのDNA断片化に関わっていることが推測された。DNAの酸化的障害の産物である8-ヒドロキシグアニンの量を調べたところ、DNA断片化の起こる条件で8-ヒドロキシグアニンの産生量が顕著に増加したが、DNAの断片化は8-ヒドロキシグアニンの産生よりも速く検出された。ヒトCu,Zn-SODの糖化を受けるLys-122とLys-128を、それぞれ単独および両方同時に性質のよく似ているThrに置換した変異cDNAを作製し、バキュロウイルスベクターに組み込んだ。現在このウイルスを昆虫細胞のSf21に感染させて得られたリコンビナントCu,Zn-SODを精製し、その性質を検討している。 更に、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の原因となっていることが示されている3種類の変異Cu,Zn-SODを発現させて、その酵素学的性質を調べた。その結果、比活性は正常なものと比べて40-100%を有していたが、酵素としてのの安定性が著しく低下していることが明らかになった。
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