研究概要 |
生体の多くの蛋白質がメイラード反応を受けており、特に後期反応生成物(AGE)を特異的に認識する細胞膜レセプターは、AGEの老化現象あるいは糖尿病合併症の病態への関与を解く重要な糸口として注目されている。平成7年度は以下の3つの結果が得られた。 【マクロファージのAGEレセプターの分離】マクロファージ(Mφ)系細胞(RAW cells)から精製したAGE結合能を有する4つの蛋白(90K,48K,28K,18K)はN末端解析の結果、3つは既知の蛋白であり、28Kは新規蛋白と考えられた。28Kに関しては現在解析中である。 【AGEレセプターとしのMφスカベンジャーレセプター】Mφスカベンジャーレセプター(MSR)のcDNAを過剰発現したCHO細胞(CHO-SR)は、AGE-BSAに対し有意な取り込み・分解能を示し、この反応はMSRの特異リガンドであるAcetyl-LDLにて効果的に阻害された。また、CHO-SR細胞によるAcetyl-LDLの取り込み・分解はAGE-BSAによって有意に阻害された。又、MSR遺伝子ノックアウトマウスから調製した腹腔Mφを用い、Acetyl-LDLとAGE-BSAの取り込み・分解を比較すると、野生型に比較して、ノックアウトマウスではAcetyl-LDLの取り込み・分解は90%以下に、又、AGE-BSAの取り込み・分解は70%以下に低下していた。これらの結果から、MφによるAGE蛋白の特異的取り込みは主としてMSRを介していると考えられた。 【血管平滑筋細胞のAGEレセプター】動脈硬化病変において平滑筋細胞(SMC)由来の泡沫細胞にAGE化蛋白の蓄積が観察されたので、SMCのAGEレセプターについて解析した。ウサギ大動脈SMCはAGE-BSAに対し特異的に結合するAGEレセプターを有し、リガンドの取り込み及び細胞内分解反応に関与する。又、同時に、AGE-BSAは本SMCに対して細胞遊走(Chemotaxis)を惹起した。しかし、これらの取り込み及び遊走反応はMSRのリガンドであるAcetyl-LDLによって阻害されなかった。従って、SMCに発現しているAGEレセプターはMSRと異なると考えられた。本レセプターはLigand blottingでは200K蛋白であり、現在、分子構造を解析中である。
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