赤血球細胞の増殖分化を制御するエリスロポエチン(EPO)のレセプターを介した細胞内シグナル伝達機序を生化学的、分子生物学的に解析した。まず、EPOがEPOレセプターに結合すると、レセプターがリン酸化されSH2ドメインを介してShc、Grb2が結合し、Sosを介してRasがGTP結合型に活性化され、Raf-1がリン酸化活性化されて、MAPKK(MEK)からMAPKが活性化されることを見いだした。またEPO刺激に依存してVavがリン酸化され、Tecキナーゼもリン酸化されてVavとTecホモロジー領域を介して結合することを見いだした。更にJAK2がリン酸化活性化されるとSTAT1、STAT3、STAT5がリン酸化活性化され特異的なターゲットDNA配列に結合することを見いだした。また、EPOの刺激で赤血球/巨核球特異的な転写因子であるGATA-1とNF-E2の発現が誘導される事を見いだした。しかしこれらは巨核球/血小板の増殖分化を制御するスロンボポエチン(TPO)でも同じように誘導された。しかしTPOの場合には血小板特異的な抗原CD61の発現が誘導された。従ってこれら細胞系列や細胞分化特異性を規定するシグナルはJAK-STATシグナル伝達だけでは解決しないことが判明した。またレセプターのリン酸化が起こらなくてもJAK-STATシグナルは活性化され増殖も分化シグナルも入ることが判明した。ヘモグロビンの誘導発現にはGATA-1とNEF-2蛋白の発現が誘導される細胞においてのみ可能であることが判明した。
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