研究概要 |
1)血糖値を上げるホルモンは生体内には数多くあるが、血糖値を下げるホルモンは唯一インスリンのみである。しかしながら、血糖値降下の主な原因であるGLUT4のトランスロケーションの細胞内シグナルはインスリン独特のものではなく、他の細胞増殖因子であるPDGFや、EGFによってもGLUT4のトランスロケーションが引き起こされること、またPDGFレセプターの変異体を用いた実験により、活性化されるPI 3-キナーゼがGLUT4のトランスロケーションに重要な働きをしていることを明らかにした。これはインスリン反応性グルコーストランスポーター(GLUT4)のトランスロケーションの分子機構を解明する上でも画期的な発見と考えられる。 2)GLUT4のトランスロケーションがGTPγS刺激でも起こることからGTPγSのtarget分子は何であるのかを検討した。我々の細胞系に各種低分子量Gタンパクと大量発現させGLUT4のトランスロケーションに与える影響を検討した。ras→MAPキナーゼの経路はGLUT4のトランスロケーションには関与していないことが明かとなった。また、rab,rho,radなどの低分子量タンパクはGLUT4のトランスロケーションにおける関与の可能性は低く、むしろ三量体Gタンパクが関与している可能性が強いことが明らかになってきた。また、GDPβSを細胞内に入れてもインスリン刺激によるGLUT4のトランスロケーションは阻害されないことからインスリンレセプターとGLUT4のトランスロケーションを結ぶ経路にGタンパクが関与している可能性は低く、むしろインスリンとindependentにGタンパクにより引き起こされるGLUT4のトランスロケーションの経路があることがわかった。
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