研究概要 |
細胞間接着、情報伝達、形態形成にかかわるそれぞれの遺伝子ファミリーは発生過程において発現が時間的、空間的に制御されており、このような遺伝子が癌になって高発現することがしられている。本研究ではラット胎仔のcDNAlibraryからcadherinfamilyの細胞内domainの保存されたオリゴヌクレオチドをprobeにして、新しいcadherin,K-cadherinを単離しその解析をおこなった。K-cadherinはmouseのN-,E-,P-cadherinと低い相同性を有し、一部しか明らかになっていないhuman cadherin-6とアミノ酸レベルで95%の相同性があった。4.1kbと8kbのtranscriptが胎仔腎および脳に発現していた。in situ hybridizationでは、胎生14日のcommashapedの尿細管に局在していた。Ratの腎癌細胞、ヒト腎癌細胞でやはり高発現していた。L-cellにtransfectionしaggregation assayを試みたところ、弱い付着性を観察した(予備実験)。K-cadherinは比較的進行した腎癌や食堂癌で発現がみられ抗体の作製をいそいでいる。また昨年単離したERK/Nuk/Cek5の全長をとり染色体の位置をきめることができた。最近ligand(LERKfamily)の続々と発見されているeph familyの遺伝子で、病理組織学的に腺窩上皮をともなった分化の良い胃癌で高発現していた。さらにやはり昨年単離したMSX2のヒト骨軟部腫瘍や大腸腫瘍における発現を検討した。spindlecelltumorに一定レベル以上の発現をみとめ悪性組織球腫などの鑑別診断に有用であった。さらにhomeodomainを一部のみ含む部分とhomeodomainを全部含むC末とのGST fusion proteinを抗原に2つのmonoclonal抗体を作製し免疫染色で使用できるかどうか評価しつつある。ヒト腫瘍のなかでは、chondrosarcomaの一部の未分化の紡垂形細胞の核が染色されており(未発表)ラット新生仔頭蓋骨に発現しているという従来の報告とcompatibleであった。Westernblotではそれぞれspecificに、抗原にしたfusion proteinと反応し、GST自体とは反応しなかった。Northern levelの過剰発現と抗原の同定との関連についての検討が、臨床応用に必要である。
|