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1994 年度 実績報告書

子宮頸癌抑制遺伝子のクローニング

研究課題

研究課題/領域番号 06454185
研究種目

一般研究(B)

研究機関大阪大学

研究代表者

湯通堂 満寿男  大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (70135747)

キーワード子宮頸癌 / 癌抑制遺伝子 / ヒトパピローマウイルス
研究概要

ヒトパピローマウイルス(HPV)16型や18型が子宮頚がんの原因ウイルスであることが明らかになってきた。しかし、子宮頚がんの発症にはHVPが感染して、そのがん遺伝子が発現するだけでは充分でなく、それに加えて細胞のがん抑制遺伝子の不活化されることが必要である。従って、子宮頚がんの発症機構を解明するためには、このがん抑制遺伝子の本体を明らかにすることが不可欠である。
子宮頚がん抑制遺伝子をクローニングするため、正常細胞由来のcDNA発現ライブラリーを腫瘍原性を持つ子宮頚がん細胞株にtransfectL、腫瘍原性を失った細胞クローンを分離した。昨年度までに、その細胞クローンからがん抑制遺伝子の候補となるcDNA(AF3)を回収し、一部、解析を行なっていたが、このcDNAは5′側の欠失した不完全なものであったため、本年度はまず、再クローニングと塩基配列決定を繰り返し、Kozakのルールに合致する蛋白合成開始コドンから終止コドンまでを含むcDNAクローニングを分離した。このAF3 cDNAは、これまで報告されたものと異なる新しい遺伝子で、N末端側に酸性領域とプロリン多含領域、C末端側にはロイシンジッパーを持つ転写因子様の蛋白をコードしている。
AF3 cDNAを子宮頚がんに由来する腫瘍原性細胞にtransfectすると、このcDNAを保持した細胞クローンはほとんど得られなかった。つまり、薬剤耐性を指標にして分離した約20細胞クローンのうち、わずかに1クローンのみが低コピー数のcDNAを持ち、mRNAを発現していただけであった。このことから、AF3は多量に発現した時には、細胞の増殖を抑制する遺伝子であるということが推測できる。また、このmRNAを発現している細胞クローンをヌードマウスに注射すると、4匹のうち、3匹に腫瘍ができたが、そのうちの2つの腫瘍組織中には導入したcDNAが検出できなかった。このAF3 cDNAの存在は腫瘍の出現に都合が悪いように見える。さらに、この細胞クローンは約100P.D.培養した時、突然増殖を停止し、平たくなって死にはじめ、殆どの細胞が死滅した。この時、生き残った少数の細胞では、問題のcDNAが脱落していることが分かった。以上の結果はAF3が大腸がんや肺がんの抑制遺伝子p53と同様、細胞の増殖を負に調節するがん抑制遺伝子である可能性を示唆している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (10件)

  • [文献書誌] S.Kyo: "Regulation of early gene expression of human papillomavirus type 16 by inflammatory cytokines." Virology. 200. 130-139 (1994)

  • [文献書誌] T.lnoue: "Correlation between tumorigenesity and expression levels or splicing patterns of transcripts of the human papillomavirus type 16 E6 gene." Jpn.J.Cancer Res.85. 357-363 (1994)

  • [文献書誌] M.Yutsudo: "Involvement of human papillomavirus type 20 in epidermodysplasia verruciformis skin carcinogenesis." J.Clin.Microbiol.32. 1076-1078 (1994)

  • [文献書誌] T.Sasagawa: "Cervical/vaginal dysplasias of the transggenic mice horbouring human papillomavirus type 16 E6-E7 genes." J.gen.Virol.75. 3057-3065 (1994)

  • [文献書誌] 湯通堂満寿男: "子宮頚癌抑制遺伝子の解析" 日本性感染症学会誌. 5. 9-13 (1994)

  • [文献書誌] H.lshiwatari: "Degradation of p53 only in not sufficient for the growth stimulatory effect of human papillomavirus 16 E6 oncoprotein in human embryonic fibroblasts." J.med.Virol. 44. 242-249 (1994)

  • [文献書誌] K.Matsumoto: "Single amino acid substitution(58P ro→Ser)in HTLV-1 tax results in loss of ras cooperative focus formation in rat embryo fibroblasts." Virology. 200. 813-815 (1994)

  • [文献書誌] 浅田 秀夫: "OK-432(ピシバニール^R)局所注射療法により軽快したBowenoid Papulosisの一例" 皮膚. 36. 663-669 (1994)

  • [文献書誌] 豊島久真男編: "がんと遺伝子" 化学同人, 149 (1994)

  • [文献書誌] 斉藤 厚、島田 馨編: "最新内科学大系 26.ウイルス感染症" 中山書店, 318 (1994)

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公開日: 1996-04-08   更新日: 2016-04-21  

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