子宮頚癌は16型や18型のヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるが、HPVのがん遺伝子が発現しただけでは癌化は起こらない。それに加えて、細胞側のがん抑制遺伝子が不活化することが必須である。本研究は、子宮頚癌に関係したがん抑制遺伝子をクローニングし、その実体を明らかにすることを目的としている。 我々は、ヒト正常細胞由来のcDNA発現ライブラリーを腫瘍原性の子宮頚癌細胞株にトランスフェクトし、増殖が抑制された細胞を選択することによってがん抑制遺伝子の候補となるcDNAクローン(AF337)を得た。この遺伝子は約380アミノ酸からなる転写因子様蛋白をコードしており、in vitroトランスレーション系では45-50kDの蛋白として検出された。mRNAの発現は調べた全ての組織で見られ、特異性はなかった。また、細胞周期にも影響されず一定の発現を示した。子宮頚癌を含めたいろいろな癌細胞株での発現を調べたところ、胃癌や膵臓癌など一部でこの遺伝子の発現低下が認められた。子宮頚癌細胞中でこの遺伝子に変異が起こっているかどうかをRT-PCR/SSCPで調べたが、まだ検出できていない。 この遺伝子を親株やRat-1にトランスフェクトすると、得られる薬剤耐性の細胞コロニー数はコントロールの25-50%に低下した。しかも、それらの細胞はほとんど全てこの遺伝子を発現していなかった。従って、この遺伝子は細胞増殖を抑制する活性を持つと思われるが、誘導ベクターを用いる方法、トランスフェクションをして一過性の影響を調べる方法などの直接的な証明にはまだ成功していない。次年度はマイクロインジェクションを試みるつもりである。
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