子宮頚癌は16型や18型のヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるが、HPVのがん遺伝子(E6E7)が発現しただけでは細胞はがん化しない。HPVのがん遺伝子に加えて、細胞のがん抑制遺伝子が不活化することが必須である。本研究は、子宮頚癌に関連したがん抑制遺伝子をクローニングし、その実態を明らかにすることを目的としている。 我々はこれまでに、ヒト正常細胞由来のcDNA発現ライブラリーを腫瘍原性の子宮頚癌細胞株にトランスフェクトし、増殖や腫瘍原性が影響を受けた細胞を選択することによって、がん抑制遺伝子の候補となるcDNAクローン(AF337)を分離することに成功している。この遺伝子は約380アミノ酸からなる転写因子様蛋白をコードしており、細胞の増殖を抑制する活性を持つと考えられる。 今年度は、この遺伝子についてさらに詳しく調べるために、この遺伝子産物に対する抗体の作成を試みた。GSTとの融合蛋白は収量が低く精製に苦労したが、最終的に抗体を得、約45kDの蛋白を検出することに成功した。この遺伝子は細胞増殖を抑制するが、その発現は細胞周期により変化することはなかった。現在、細胞内局在、複合体形成、各種がん細胞での発現などについて調べている。また、AF337が細胞周期の特定の時期に停止させるかどうかを調べるため、細胞表面マーカーと共に親株にトランスフェクトし、FACSで解析したが、周期パターンに大きな変化はなかった。このことから、この遺伝子は細胞増殖を周期非特異的に止めると推測できる。次に、このAF337蛋白のターゲット蛋白(遺伝子)を分離する目的でtwo-hybrid法を試みた。現在までに、1クローン分離できたが、これは同じ遺伝子のロイシンジッパー部分を持ったものであった。このことから、AF337はロイシンジッパーによりホモダイマーを形成することが明らかになった。さらに、この遺伝子の転写活性化能をone-hybrid法で検討したが、転写活性化能は認められなかった。今後もさらに、この遺伝子の細胞増殖抑制機構について解析を進める必要がある。
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