子宮頚癌は16型や18型のヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるが、HPVの癌遺伝子(E6E7)が発現しただけでは細胞は癌化しない。HPVのがん遺伝子に加えて、細胞のがん抑制遺伝子が不活化することが必須である。本研究は、子宮頚癌に関連したがん抑制遺伝子をクローニングし、その実態を明らかにすることを目的としている。 われわれは、ヒト正常細胞由来のcDNA発現ライブラリーを腫瘍原性の子宮頚癌細胞CGL4にトランスフェクトし、腫瘍原性が影響を受けた細胞を選択して、そこからがん抑制遺伝子の候補となるcDNA (AF337)を得た。このcDNAはCGL4に導入したとき、増殖を抑制する活性を示した。つまり、トランスフェクトしても、cDNAを発現している細胞は1クローン(No.5)を除いて皆無であった。このクローンNo.5をヌードマウスに注射すると腫瘍を作ったが、その多くは問題のcDNAを失っていた。これらの結果は、この遺伝子の発現が細胞増殖に都合の悪いものであることを示唆している。AF337 mRNAは約2.3kbで、調べた全ての正常組織で発現していた。また、子宮頚癌5株を含むほとんどの癌細胞でも発現に変化がなかったが、いくつかの癌細胞株で発現の低下がみられた。この遺伝子にコードされている蛋白は、酸性領域、プロリンリッチ領域、ロイシンジッパー構造を持つので、転写因子ではないかと推測している。機能の明らかな他の遺伝子とはホモロジーがなく、新規の細胞増殖抑制遺伝子であると考えられる。
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