DNA修復関連遺伝子操作マウスを用いた発癌メカニズムの解析

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454191
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中鶴 陽子 東京大学, 医学部(医), 助手 (00237314)
• 研究分担者: 小田 秀明 東京大学, 医学部(医), 助手 (40214142) ; 石川 隆俊 東京大学, 医学部(医), 教授 (30085633)
• キーワード: DNA修復 / O^6-メチルグアニン / メチルトランスフェラーゼ / トランスジェニックマウス / 遺伝子欠損マウス / 色素性乾皮症 / 発癌予防 / 疾患モデル

研究概要

申請者らによって作成されたDNA修復にかかわる大腸菌O^6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子導入トランスジェニックマウス(adaマウス)及び、大阪大学田中亀代次博士らの樹立した色素性乾皮症A群遺伝子欠損マウス(XPAマウス)を用いて以下の研究を行った。
1)adaマウスと対照マウスに肝臓に発癌標的をもつ発癌物質DENA、DMNA及び癌の化学療法に用いられているACNUを投与したところ、adaマウスは対照マウスに比べて明らかに抵抗性を示し、致死率も低く、病理組織的にみて肝細胞の障害が軽微であった。
2)ヒトの色素性乾皮症のモデルマウスともいえるXPAマウスと対照マウスを用いて皮膚腫瘍を誘発するDMBAによる皮膚発癌実験を行ったところ、DMBAの一回塗布、TPAによる繰り返しプロモーション実験ならびに低濃度DMBA連続塗布のいずれの実験モデルでもXPAマウスはきわめて早期に腫瘍が発生し、発癌感受性であることが示された。
3)XPAマウスは、DENAにたいしても感受性が高く肝癌を高率に発生した。
4)以上の成果は、遺伝子操作を用いて作出したDNA修復関連遺伝子を強く発現ないしは欠損するマウスを用いて得られたものである。DNA修復遺伝子が発癌物質に対する抵抗性及び発癌感受性に直接かかわっていることを生体モデルを用いて実証したものである。

研究成果

• [文献書誌] Nakatsuru,Y.,et al.: "O^6-methylguanine-DNA methyltransferase activity in human lung persists with advancing age." Gerontology. 40. 3-9 (1994)
• [文献書誌] Qin,X.,Nakatsuru,Y.,et al.: "DNA adduct formation and assessment of aberrant crypt foci in vivo in the rat colon mucosa after treatment with N-methyl-N-nitrosourea." Carcinogenesis. 15. 851-855 (1994)
• [文献書誌] Qin,X.,Nakatsuru,Y.,et al.: "Detection of active repair of UV-photoproducts in monkey skin in vivo by quantitative immunohistochemistry." Cancer Letter. 83. 291-298 (1994)
• [文献書誌] Oda,H.,Nakatsuru,Y.,et al.: "Mutation of the p53 gene and p53 protein overexpression are associated with sarcomatoid transformation in renal cell carcinoma." Cancer Research. 55. 658-662 (1995)
• [文献書誌] Oda,H.,Nakatsuru,Y.,et al.: "A mutational hot spot in the p53 gene in associated with hepatoblastoma." International Journal of Cancer. (in press). (1995)
• [文献書誌] 中鶴陽子: "ジーンターゲッティングと疾患解明(矢崎義雄編)" 羊土社, 157 (1995)
• [文献書誌] 中鶴陽子: "臨床分子生物学" 日本臨床, 556 (1994)