研究概要 |
マイソン裂頭条虫凝充尾虫が産生する27KD蛋白は、GH-ラジオリセプターアツセイを用い、GH受容体-アフィニテイクロマトグラフィなどのクロマトグラフィにて精製された。そしてその部分的アミノ酸配列がカテプシン-Lに相同性を持ち、ヒトIgGを切断することを以前に報告した。今回は虫体抽出液の抗-27KD蛋白抗体に対する作用を観察した。抽出液は、ビオチン化抗-27KD抗体と共にインキュベートするとそれを切断し、その切断活性はカテプシン-L阻害剤であるE64やロイペプチンによって抑制された。そして本虫をMEMにて培養し、^<125>I-抗27KD抗体を培養液に添加すると、量、時間依存性に虫体内の放射活性が増加し、さらに虫体内に切断された抗-27KD抗体のフラグメントが認められた。即ち本虫は、自らが産生する27KD蛋白に対して産生される宿主の抗体を切断し、宿主の液性免疫攻撃から回避していることが示唆された。一方、この27KD蛋白を含む虫体培養液のマウスの腹腔マクロファージの一酸化窒素合成酵素(NOS)、IL-6, TNF-αのmRNAの発現に対する作用をノーザンブロツト解析で観察した。その結果、培養液は、IL-6, TNF-α遺伝子の発現を誘導し、IFN-αによるIL-6遺伝子の誘導を促進する一方、LPSによるNCS, IL-6, TNF-α遺伝子の発現を濃度依存性に抑制することが明らかとなった。これらの所見は、凝充尾虫が宿主の細胞性免疫機構に干渉して宿主免疫から回避することを示唆し、そして宿主に免疫学的寛容を誘導していることが推測された。 このような作用を発現する物質を今後精製すると共に成長ホルモン様物質との関連性を検討することが課題である。一方、27KD蛋白のcDNAのクローニング実験に関しては、種々の方法で実験を進めるも、十分なmRNAの抽出が困難であり、今だクローニングに至っていない。
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