研究概要 |
(1)新しい下痢原因毒素であるcytolethal distending toxin(CDT)の遺伝子が、大腸菌以外に赤痢菌のうちS. dysenteriaeとS. sonneiにも存在することを明らかにした。しかしコレラ菌をはじめ、種々のVibrio属菌には存在しなかった。 (2)S. dysenteriaeのCDT遺伝子の構造を調べた結果、大腸菌のCDT遺伝子と11塩基が異なることを明らかにした。アミノ酸の相違は2残基であった。 (3)S. dysenteriaeのCDT遺伝子とE. coliにクローニングし、その産物を部分精製し、性状を調べた。しかし、その下痢活性を明らかにすることはできなかった。 (4)患者、環境材料などの種々の起源から分離したVibrio choleraeO1、O139およびそれ以外の血清型菌に、コレラ毒素、ZOT、ACEおよびエルトールヘモリジンの遺伝子が、どのように分布しているかを、合計1,154について調べ、それぞれの毒素遺伝子が、種々の組み合わせで存在することを明らかにした。コレラ菌による下痢に、今後これらの遺伝子産物がどのように関与しているかを調べることにより、コレラ菌の下痢原性についての詳細な情報を得る手がかりが得られた。 (5)腸管出血性大腸菌が産生するVero毒素のうち、従来variantの存在が報告さてれてないVT1について、2種類のvariantの存在を明らかにし、それぞれの構造遺伝子の塩基配列を決定した。variantの1つVT1v1については、精製を行い、精製毒素の性状を明らかにした。その結果、VT1v1はVT1より生物活性が1/40〜1/100と低いことがわかった。VT1v1とVT1とはアミノ酸配列で83%の相同性であるが、活性の低下が相同性の無いアミノ酸に起因する可能性を推定することができた。
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