研究概要 |
本研究において、細菌性プロテアーゼの病原性発現メカニズムについて解析を行い、その研究成果として、1)細菌性プロテアーゼにより細菌の血管内への播種が高まり、敗血症が促進されることを明らかにした。この際、細菌性プロテアーゼによるブラジキニン生成が敗血症の発生に深く関わっていることを明らかにした(Microbiol. Immunol.40 : 415-423,1996)。2)各種細菌性プロテアーゼのうち、サーモライシンファミリーに属するコレラ菌プロテアーゼ、緑膿菌エラスターゼがMMPの強い活性化能を有することがわかった。また、これらサーモライシン属プロテアーゼは、これまで報告のなかったMMPのアミノ酸残基を認識して、限定分解により特異的にMMPの活性化をもたらしていることがわかった。従って、病原性細菌の産生するいくつかの細胞外プロテアーゼは、宿主のMMPの活性化を介して細菌の生体内侵入を容易にし、その病原性に寄与する可能性が示された(J.Biol.Chem.272 : 6059-6066,1997)。3)我々が独自に作製したブラジキニン生成阻害剤、SBTI(大豆トリプシンインヒビター)-ゼラチンポリマーを緑膿菌性プロテアーゼあるいはLPS誘発性ショックモデル(ラットもしくはモルモット)に投与することにより、その抗キニン作用を介して著明な抗ショック作用がもたらされた(Immunopharmacology 33 : 369-373,1996)。 以上の知見は、細菌性プロテアーゼが病原細菌の生体内侵入および敗血症の発症に深く関わっており、細菌感染における重要な病原因子として機能していることを示している(Biological Chemistry,Hoppe-Seyler 377 : 217-226,1996 ; Microbiol.Immunol.40 : 685-699,1996 ; Immunopharmacology 33 : 222-230,1996)。
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