C型肝炎ウイルス(HCV)は血中ウイルス濃度が低く、不安定なウイルスであり、しかも組織培養系での効率のよいウイルス増殖系が確立されていないこともあり、ウイルス粒子の大量精製にも未だ成功していないのが現状である。そこで、HCV粒子の物理化学的な性状を調べ、確かな電子顕微鏡像として観察し、大量精製によりnativeのウイルス蛋白の性状を明らかにすることを本研究の目的とした。 HCV粒子の精製を進める過程で、無症候性キャリア(供血者)やC型肝炎患者の血中ウイルス粒子の大多数がβ-lipoproteinやγ-globulinと結合した状態にあることが明らかとなった。前者が結合した粒子は軽く、後者が結合した粒子は重くなる傾向にあり、粒子密度も1.06-1.21g/cm^3の幅を持っているが1.09-1.11g/cm^3をピークとしていることがわかった。また、感染成立に関係したのHCVゲノムとその血清中の抗体の解析から、エンベロープ糖蛋白(E2/NS1領域)のN末端側に位置する超可変部位が中和に関係するepitopeを担っている可能性が強く示唆された。このエンベロープ蛋白に対する抗体がHCV粒子の免疫電顕による観察にも役立ちうるものと期待され、実験を継続中である。小規模での精製操作により電子顕微鏡で1視野に数個から数10個のウイルス様粒子を観察できるレベルまでに至った。しかし、HCVは極めて不安定なウイルスであり、また血液中には精製を困難にする多くの血清蛋白やlipidが混在しており、精製過程での回収率が低下を克服すべく、大量精製に向けての工夫を続けている。
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