前年度までに得られた研究成果および確立できた方法に準拠し、予めreverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法によるHCVRNAの測定、およびコア抗原に対する2種類のモウスモノクローナル抗体を用いたELISA法によるHCVコア抗原の測定を行うことによってウイルス粒子精製に適した供血者血漿を選別した。血中ウイルス量が多く、精製に適する供血者血漿はHCVRNA陽性血液約30検体に1検体程度の頻度で認められるに過ぎなかった。以上のようにして選んだ高力価の供血者血漿(3000ml)よりHCV粒子、およびコア粒子の大量精製を試み、発現エンベロープ蛋白および合成ペプチド(E2領域のN末端に位置する超可変領域の合成ペプチドや合成コアペプチド)を免疫原として得られた抗エンベロープ抗体、抗コア抗体を用い、免疫沈降法、免疫電顕法により得られた粒子の特異性を確認した。金コロイド標識した抗体との反応性も検討し、その特異的な結合を観察できた。 血中ウイルス粒子の大多数がlipoproteinやγ-globulinと結合した状態にあり、安定な状態でそれを特異的に乖離することが困難であることから、精製度の高いウイルス粒子の大量回収には現時点では限界があり、当初の実験計画に含まれていたnativeのエンベロープ糖蛋白やコア蛋白のアミノ酸組成およびアミノ酸配列解析には至らなかった。しかし、電子顕微鏡上、形態がよく保たれたウイルス粒子を1視野に数10個の割合で認めることはできた。世界的にも、このレベルまで精製が成功した報告は未だない。
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