HCV粒子の精製を進める過程で、HCV持続感染者の血中ウイルス粒子の大多数がβ-lipoproteinやγ-globulinと結合した状態にあることが明らかになった。前者が結合しているウイルス粒子は軽く、後者が結合した粒子は重くなる傾向にあり、粒子密度も1.06-1.21g/cm^3の幅で分布しているが、比重のピークは概ね1.09-1.11g/cm^3の値であることが分かった。 感染成立に関係したHCVのゲノムRNAとその血清中の抗体の解析から、エンベロープ糖蛋白(E2/NS1領域)のN末端側に位置する超可変部位に対する抗体が感染阻止に役立ち、中和抗体として働きうることを明らかにした。このエンベロープ蛋白に対する抗体がHCV粒子の免疫電顕による特異的な観察にも役立つことが分かった。精製ウイルス粒子の界面活性剤処理によって比重1.24〜1.25g/cm^3のコア粒子が得られ、HCV持続感染者の血中IgGを反応させた免疫電顕によって凝集像を観察できた。金コロイド標識した抗エンベロープ抗体および抗コア抗体との反応性も検討し、それらの抗体のウイルス粒子、コア粒子への特異的な結合を観察できた。 血中ウイルス量が多く、精製に適するHCV RNA陽性血液は約30検体に1検体程度の頻度で認められるに過ぎなかった。上述のように、血中HCV粒子の大多数がlipoproteinやγ-globulinと結合した状態にあり、安定な状態でそれらを特異的に乖離することが困難であることから、精製度の高いHCV粒子の大量回収には現時点では限界があり、残念ながらnativeのHCV構造蛋白のアミノ酸組成およびアミノ酸配列解析には至らなかった。しかし、電子顕微鏡上、形態がよく保たれたウイルス粒子を1視野に数10個の割合で認めることはできた。世界的にも、このレベルまで精製が成功した報告は未だない。
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