本研究は自己免疫疾患あるいはアレルギーに感受性の高いHLA-IIに結合するペプチドの構造モチーフを手がかりとして、これらの疾病を誘導する抗原ペプチドを同定したものである。また、これらのペプチドのアナロクに対するT細胞応答を解析することにより、T細胞の抗原認識機構を詳細に解析すると共にT細胞の免疫応答を修飾するための基礎データを得た。本研究の成果は以下のようにまとめられる。 1)自己免疫疾患に高感受性を示すHLA-IIに結合するペプチドのアミノ酸配列を、ファージランダムペプチドライブラリーの中からHLA-IIに親和性を示すものを単離して、そのペプチドインサートをコードする塩基配列を決定する方法などにより同定した。さらにペプチド上の各アミノ酸残基を置換したアナログのHLA-IIへの親和性を調べて、HLA-IIに結合するペプチド上のHLA-IIアンカー残基の位置と許容されるアミノ酸の種類(HLA-II結合モチーフ)を決定した。 2)これらの情報をもとに疾病を発症させる原因となる自己免疫現象において、疾病感受性HLA-IIにより自己反応性T細胞に提示される自己抗原ペプチドを推定あるいは同定した。 3)種々のアレルギー性疾患患者において、CD4^+T細胞にIL-4の産生を刺激するアレルゲン由来の抗原ペプチドならびに抗原提示に関わるHLA-IIを多数同定した。 4)T細胞が認識する抗原ペプチド上のアミノ酸残基を1個だけ、他のアミノ酸に置換したアナログに対するヒトT細胞クローンの応答を詳細に解析し、T細胞の抗原認識をアンタゴナイズしたり部分的に活性化するアナログの構造と出現頻度を決定した。さらに抗原提示細胞によるIL-12の産生増強を誘導するなどの機序により、T細胞の増殖反応あるいはIFNγ産生を増強する作用のあるアナログの存在を明らかにした。
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