研究概要 |
血清中に存在するレクチンの一つのマンノース結合蛋白(MBP)は、生体防御に重要な働きをしている。我々は、MBPには、新たなセリンプロテアーゼMASPが結合して補体を活性化していることを発見した。MBP-MASP複合体による補体活性化は、レクチンによる糖鎖認識に基ずくより原始的な生体防御機構であり、認識機構を持たない非特異的な活性化の第二経路や、抗原抗体を認識してC1に始まる古典的経路とは異なる新たな補体活性化経路(レクチン経路)が存在することを意味する。そこで、本研究はレクチン経路の生体での役割と進化の過程を明らかにすることを目的とし、本年度は次のような結果が得られた。 1.ヒトMASP遺伝子解析の結果、セリンプロテアーゼドメインは、Clsと異なり、エクソン、イントロン構造をとることが判明した(Int.Immunol.,8:1355-8,1996)。 2.ヤツメウナギ(円口類)、ゼノパス(両生類)のMASPのcDNAのクローニングが完了し、ゼノパスは、哺乳類と比較的類似の構造を取っているが、ヤツメウナギは、やや異なった構造を取り、MASPやClr/Clsの原型と思われた(論文投稿中)。 3.無脊椎動物のホヤ(原索類)において、補体C3およびMBP-MASP複合体の存在を蛋白レベルで証明し、MBP-MASP複合体が、C3を分解することが明らかとなった。このことは、レクチン経路が補体経路の原型であると考えられた(論文投稿中)。 4.ホヤMBPのcDNAをクローニングし、糖鎖認識部位は、哺乳類と同様の構造を取ることが判明した(論文投稿中)。
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