研究概要 |
FcRはアレルギーの効果相において、エフェクター細胞活性化の鍵を握る分子として近年特に活発に研究され注目されている。ヒト高親和性IgEレセプター(FcεRI)は遊離のIgEを結合するが、またB細胞上の膜型IgEとも結合することを発見し、FcRと膜型免疫グロブリンの結合を介して細胞間相互作用を探求する新しい研究分野が拓かれた。 1.リコンビナント可溶化ヒトFcεRIα鎖(soluble α)存在化のヒトIgE定量系の確立 soluble αによるIgE産生系への影響を調べるため、soluble αに影響されないIgE定量系(ELISA)を確立した。Fcε鎖上のFcεRIへの結合部位であるCε3以外のエピトープを認識する抗IgE抗体をスクリーニングしELISAに用いた。 2.soluble αによるIgE産生の特異的抑制 アレルギー患者末梢血B細胞のIgE産生に及ぼすsoluble αの影響を検討した。IL4+単核球、IL4+抗CD40抗体+B細胞、IL4+ハイドロコーチゾン+B細胞等の系におけるIgE産生を、soluble αはクラス特異的に抑制することを明らかにした。mRNAレベルの検討によって、この抑制はmature secreting Cε,mature membramous Cε mRNAの転写阻害によることを解明した。germline Cε mRNAの転写には殆んど影響を与えないことも判明した。 3.soluble αの標的細胞とその結合分子 soluble αはIgE^+B細胞上の膜型IgEに特異的に結合することを明らかにした。 4.soluble αのin vivoにおけるIgE産生抑制 アレルギー患者末梢血由来のB細胞をSCIDマウスの腹腔に移入し、soluble αを静脈内投与すると、IgE産生が抑制されることを確認した。 5.細胞膜上の、あるいは固相化したFcεRIα鎖とB細胞上の膜型IgEとの相互作用 soluble αをプレートに固相化して、その上でIgE産生ヒトミエローマ細胞株(U266)を培養するとIgE産生が抑制されることを明らかにした。
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