研究概要 |
日本人一般人口のカドミウムおよび鉛に対する曝露を定量的に測定するため、1980年代に一度調査を行った地点を中心に19ヵ所において467名の成人女子から末梢血検体の提供を受けた。この467名のうち375名からはさらに陰膳方式による24時間食事検体の提供を受けた。末梢血および食事検体中のカドミウムおよび鉛を無炎原子吸光法で測定し、今回(1990年代)と同一地点での1980年代の値と比較した。血中カドミウム(Cd-B)および食事中カドミウム(Cd-F)のそれぞれの幾何平均値は1.98ng/mlと30.0μg/日で、1980年代の値(3.58ng/mlと380μg/日)に比していずれも有意に低値であった。血中鉛および食事中鉛も今回の測定値(23.2ng/mlと7.1μg/日)は1980年代の値(33.9ng/mlと32.2μg/日)に比していずれも有意に低値であった。従ってカドミウムと鉛のいずれを指標としても日本人の負荷は過去10年間に軽減されたと判断出来る。さらに比較的に負荷の大きいカドミウムについて、その生体影響の有無を知る目的で19ヵ所に居住する成人女子378名を対象にCd-F、Cd-Bに加えて尿中カドミウム(Cd-U)およびα_1-ミクログロブリン(α_1-MG)、β_2-ミクログロブリン(β_2-MG)、レチノール結合蛋白(RBP),およびクレアチニンを測定した。Cd-Fを指標にカドミウム低濃度曝露群(97名;Cd-Fの幾何平均値20.4μg/日)、中等度曝露群(120名;35.0μg/日),高濃度曝露群(66名;67.0μg/日)にわけてカドミウム曝露に対応する変化を解析したところ、Cd-Fの上昇に伴ってCd-B,Cd-Uは高値を示したが、α_1-MG、β_2-MG、RBPはいずれも明らかな上昇を示さず、この程度の曝露では低分子蛋白尿の発生頻度は上昇しないと判断された。
|