職業性アレルギー疾患を予防するためには、適切な方法を用いて産業化学物質の皮膚感作性を予知・評価し、それを現場に応用することは重要である。本研究では、サイトカイン産生を指標とする産業化学物質の皮膚感作性の評価法を確立するために、OXAZ、PCLとDNCBを用いて、アレルギー性皮膚炎マウスを作成した。アレルギー性皮膚炎の感作段階および誘発段階において、皮膚炎マウスの皮膚、リンパ節と脾臓とのIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、IL-12p35、IL-12p40、IL-13とIFN-γのmRNA発現は、定性的または定量的RT-PCR法で検討された。また、これと刺激性皮膚炎との相違をも比較した。その結果、感作段階では、DNCBおよびOXAZで感作したマウスのリンパ節においては、Th1細胞のサイトカインであるIL-2、IL-12とIFN-γのmRNAのみならず、Th2細胞のサイトカインであるIL-4、IL-5、IL-10とIL-13のmRNAも強く発現したが、対照およびSDS処理群のマウスでは弱いIL-2、IL-4、IL-10、IL-12とIFN-γのmRNAしか検出しなかった。そのなかで、特にIL-2、IL-4、IL-12とIFN-γのmRNA発現が他ののサイトカインより強かったことが認められた。また、OXAZはDNCBより強いサイトカインの誘導作用を示している。他方、誘発段階では、マウスの脾臓のIL-12p40とIFN-γのmRNA発現は対照マウスより高かったが、他のサイトカインは両者の間には差が無かった。また、刺激性皮膚炎と対照群との間には脾臓のサイトカイン発現の差異を認めなかった。しかし、脾臓とは対照的には、正常マウスの皮膚では弱いIL-2、IL-10とIL-12のmRNAだけを検出したが、アレルギー性皮膚炎のマウス皮膚では、IL-2、IL-4、IL-12、IL-13とIFN-γのmRNAが特異的に強く発現された。特に、顕著なのはIL-2、IL-4、IL-12p40とIFN-γのmRNAであった。また、僅かなIFN-γ mRNAの誘導は刺激性皮膚炎の皮膚でも認められた。これらの成績より、感作段階のリンパ節と誘発段階の皮膚とのIL-2、IL-4、IL-12p40とIFN-γのmRNAを同時解析することはたぶん皮膚感作性の産業化学物質の皮膚感作性の有用な評価法になろうと考えている。
|