研究概要 |
ダイエットなどで大きな体重の増減を繰り返すことをウエイト・サイクリングというが,このウエイト・サイクリングが動脈硬化の危険因子に及ぼす影響について検討を行った。対象は昭和52年より追跡調査を行っている男性工場従業員11,004名である。その結果以下のような成果が得られた (1)体重変動幅との検討で、血圧、血漿コレステロール、トリグリセライド、空腹時血糖がウエイト・サイクリングによって影響を受けること、ウエイト・サイクリングによる影響は血糖値以外は年齢によって異なり、35歳未満の若年者で強いこと、またウエイト・サイクリングによる体重変動幅は4kg以下に押さえれば、その影響は比較的少ないことなどがわかった。 (2)1回のウエイトサイクリングの前後での比較検討でも同様の結果が得られた。 (3)ウエイト・サイクリングと身体のストレスとの関連から、追跡中の胃・十二指腸潰瘍について検討したが、有意な差は得られなかった。 (4)追跡期間中に死亡が82名確認された。しかし、これらの死亡者のウエイト・サイクリングの大きさは有意に大きくはなっていなかった。 (5)胸部X線での大動脈弓石灰化については、対象者が60歳以下のため追跡期間中に新たに生じた例はほとんどんなく解析できなかった。 (6)追跡期間中に320名に心電図の虚血性変化が出現したが、ウエイト・サイクリングの大きさはむしろこの群で小さくなっており予想された関係は、今回得られなかった。 (7)対象のうち116名を選び、詳細な生活調査や、精神心理学的調査を行い、実際の体重変動との関連の検討をおこなった結果ウエイト・サイクリングと食事・栄養、運動とは関連が見られなかったが、うつ傾向があると判断される者で体重変動幅が大きい傾向があった。
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