1).回転カゴを応用したマルチプル回避学習装置を用いたラットの回避学習の阻害について。 メタンフエタミンとアルコール併用投与の初期では、メタンフエタミン単独投与群より学習阻害が目立たなかったものの、投与の進展につれて学習阻害が著るしくなり、興奮性の増大、抑制性の欠如及び弁別性の低下が認められた。すなわち、メタンフエタミンとアルコールの継続併用ではメタンフエタミン単独継続投与より有意に獲得性の回避学習を阻害し、その阻害程度は、アルコール併用によってメタンフエタミン性過興奮がより触発されるとともに、行動の抑制成分の著しい阻害が生じるものと考えられる。また、アルコール併用によって興奮性への弁別は若干回復するものの抑制への弁別低下が線型的に亢進した。 2).脳内伝達物質(ドーパミン、セロトニン)の変動について メタンフエタミン投与後の休薬期ではドーパミンの増加、及びセロトニンの減少があり、アルコール投与群ではドーパミン及びセロトニンの減少が認められる。 このことからメタンフエタミンは脳内神経伝達物質に後遺的に強く影響が持続することがわかった。 また、両者の併用では、その動態変化がより複雑となり促進され、メタンフエタミン性の変化とアルコール性の変化とが相補あるいは相殺される傾向が指摘された。 これらの結果は、アルコールによってメタンフエタミン性の神経毒形成が助長され、併用継続に伴う脳内神経伝達物質代謝に対する併用期間依存性の相乗作用が示唆された。 3).平成7年度は、引続き、コカインについて同様の検討を行う予定である。
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