抗リン脂質抗体症候群とは、抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体およびループスアンチコアグラント)陽性者に、高率に動・静脈血栓症、習慣流産および血小板減少症が認められることから、つけられた名称である。 本研究の目的は、本症候群に認められる抗カルジオリピン抗体の特異性と血栓原性を解明することであるが、当該年度の研究では以下の点が明らかとなった。 1.抗カルジオリピン抗体の対応抗原が、カルジオリピンを含む陰性荷電リン脂質と結合する性質を有する血中のアポリポ蛋白であるβ_2-グリコプロテインI(β_2-GPI)であること。 2.抗カルジオリピン抗体が反応するβ_2-GPI上の抗原決定基は、β_2-GPIが陰性荷電リン脂質もしくは酸素原子と結合することにより新たに出現してくること。 3.ヒト抗リン脂質抗体症候群の患者リンパ球よりモノクローナル抗カルジオリピン抗体産生株を樹立し、その特異性を解析したこと。 4.β_2-GPIは陰性荷電を有するリン脂質のみならず、血中の酸化LDLにも反応し、抗カルジオリピン抗体が反応するようになること。
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