ヒト胃前庭部(モチリンの生理的作用点と考えられる)において、エリスロマイシン誘導体(モチライド)の一つであるEM574のin vitroにおける特徴をモチリンと比較検討することで評価した。 (1)筋条片収縮実験:胃前庭部平滑筋層より作製した筋条片に対し、EM574はモチリンと同様に用量依存性の収縮反応を惹起し、これらの収縮はアトロピン及びTTX抵抗性であり筋直接作用が示唆された。 (2)単離平滑筋細胞収縮実験:コラゲネース処理により単離した平滑筋細胞は、EM574およびモチリンにより用量依存性に収縮し、用量反応曲線はほぼ同等であった。 (3)ラジオレセプターアッセイ:^<125>I標識モチリンを用いて、胃平滑筋のホモジネートにおける結合実験を行った結果、EM574は特異的に^<125>I標識モチリンのホモジネートへの結合を阻害し、その阻害効果はモチリンに近似したものであった。 (4)オートラジオグラフィー:ヒト胃前庭部の凍結切片によるオートラジオグラフィーを行った結果、平滑筋層にのみ^<125>I標識モチリンの特異的結合が認められ、これはモチリン同様EM574によっても置換された。このことからモチライドもモチリン同様、平滑筋上のモチリン受容体に結合して作用することが示唆された。また、縦走筋に比べ輪状筋の方が受容体の密度が高い傾向がみられた。 モチリン受容体の分離精製・構造決定(架橋実験):ヒト胃平滑筋の細胞膜画分への^<125>I標識モチリンの結合が認められなかったため、ラジオレセプターアッセイ同様、平滑筋ホネジネートを用い^<125>I標識モチリンを反応させた後、架橋・可溶化し、SDSゲル電気泳動・オートラジオグラフィーを行った結果、モチリンで特異的に結合阻害される分子量の異なる3つのバンドが得られた。その後ゲル濾過により単一のピークが得られ、現在タンパクの精製を行っている。
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