研究概要 |
当該研究期間における成果は、正常肝の70%部分切除後には第3、7、14日目にIII,IV型コラーゲンのmRNAの発現がその他の時期に比べて2-3倍増強することが判明した。また、Brdu染色によりDNAの合成を経時的に調べると、門脈域より中心静脈にむかって染色されることが判明した。このことは肝部分切除後の肝再生が一度に起こるのではなく波の如く、門脈域より派生するものと考えられる。この実験系にコラーゲンの合成酵素(プロリルハイドロキシラーゼ)阻害剤を前投与しておくと、70%部分肝切除後24時間目には、Brdu染色が有意に抑制され肝細胞のDNA合成が抑制されていることがわかった。これらのことから、コラーゲンを初めとする細胞外マトリックスは肝細胞の再生に必要なものであることがわかった。 他方、ラットにブタ血清を投与すると肝細胞壊死を伴わず、TGF-βの増加によりコラーゲン合成が開始され線維肝ができる。この実験系を用い、ブタ血清投与後に肝部分切除を行ったところ24時間後のDNA合成能(BrdU Labeling index)は、非投与群に比べ約半分に抑制された。この時の肝組織内のTGF-β蛋白濃度とIII型コラーゲンmRNAの発現はブタ血清投与群で有意に上昇していた。すなわち、細胞外マトリックスの過剰産生は肝再生を抑制することが明らかになった。 今後は、この系にproly14-hydroxylase阻害剤を加え、再度細胞外マトリックスの過剰産生を抑制することが、肝再生促進につながるかを検討する予定である。
|