研究概要 |
平成6年度に,肝臓ではNOが血管弛緩因子として作用せず,ヘムオキシゲナーゼから生成される一酸化炭素が内因性の弛緩因子として作用することが,肝臓で明らかにされた。これを契機に血管トーヌスの調節部位として申請者らは類洞壁細胞である伊東細胞に着目した。この細胞は可溶性グアニレートシクラーゼ活性が極めて高く,マイクロモルレベルのCOによりcGMPが上昇することが,平成7年度に明らかにされた。またCO生成量にみあった量のビリルビンが胆汁排泄空間へ選択的に分泌されるために,門脈灌流液中にtaurocholateが必要であることも示された。CO抑制時に生じる血管抵抗の増大は門脈の収縮によるものではなく,類洞レベルの不連続性収縮によること,その収縮部位に一致して伊東細胞が局在することが微小循環の解析で明らかになった。またCO抑制に際して胆汁流量が増加することが見い出された。肝細胞の生成するCOが胆汁流量を調節する因子であることを示す初めての報告である。そこでメカニズムにはcGMPの関与の可能性が低く,細胞内ATPの調節,K^+チャネルの開口確率の調節を介したメカニズムを想定しているが,詳細は現時点では不明であり,さらに検討を進めている。
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