研究概要 |
新年度末に明らかになった内因性一酸化炭素(CO)による肝血管抵抗の調節作用を示す成績から、COの作用部位の特定を明らかにするため、肝実質細胞,類洞内皮細胞,伊東細胞を初代培養し、CO,NOによるcyclic GMPの反応を検討した。その結果、伊東細胞は可溶性グアニレートシクラーゼ活性が極めて高く、CO数μMに反応してcGMPが上昇することが示された。一方分離灌流肝を用いた系において、COの生成酵素であるヘムオキシゲナーゼの阻害剤を投与すると肝血管抵抗が上昇するのに伴い、類洞血管の不連続性狭小化が起こること,狭小化部位に一致して伊東細胞が局在することが明らかとなった。以上のことから、類洞のトーヌスが肝実質から生成されたCOが伊東細胞に作用し、cGMP依存性に調節されることが示された。肝実質細胞のCOはそれ自身に作用し、何らかの生物活性を発揮する可能性が考えられるが、ヘムオキシゲナーゼが胆汁色素の代謝のkey Enzymeであることを考慮し、COが胆汁流量の調節因子である可能性の検証を試みた。ラット分離灌流肝において、ヘムオキシゲナーゼ阻害剤Zinc protoporphyrin IXの投与により胆汁流量は灌流液中に胆汁酸が存在するときに有意な増加を示した。また肝細胞における胆汁排泄のmotivation forceとなる毛細胆管の収縮間隔を、培養肝細胞のtime-lapse video microscopy で解析したところCOの抑制により収縮回数の増加が認められた。しかしながらこの現象にはcGMPの関与は否定的であり、一方、細胞内ATP量がヘムオキシゲナーゼの阻害により上昇することから、現在COが細胞内ATPを変動させ、K^+チャネルの機能を変化させる可能性を検討している。
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