研究概要 |
平成6年度はPeyer板へのリンパ球の接着過程に焦点をあて定量的に解析した。 ラットの回腸部Peyer板をデジタルイメージングシステムを備えた蛍光顕微鏡下に観察し、carboxyfluorescein succinidimyl ester(CFSE)にて標識した腸管リンパ球を頚静脈より投与し、post-capillary venule(PCV)への接着過程を検討した。 1。リンパ球注入後のリンパ球と血管内皮とのinteractionに関し、接着する以前にrollingが生ずることが明らかとなった。rolling velocityに関しては赤血球速度の約2%に分布しているが、リンパ球のsubset間で差は無いことが明らかになった。 2。腸管リンパ由来リンパ球は投与後PCVへ接着してゆくがこの際の時間経過を血管径との関係を検討した成績では著明な接着は5-10分後より始まり20-30分後にピークに達することが明らかとなった。この際にリンパ球は25-50μmのサイズのPCVに主に接着するが、その傾向はCD4のリンパ球subsetにおいて見られ、CD8TcellやBcellはより広い範囲のPCVに付着する傾向が見られた。 3。白血球-内皮上の接着分子に対する特異抗体を用いてどのような分子機構がHEV上でのリンパ球stickingやrollingに重要なのか明らかにした。すなわちラットのICAM-1,LFA-1,VLA-4,およびsiaryl-Lewis Xに対する抗体を前投与しrolling velocityとstickingに対する影響を計測した成績では。ICAM-1,LFA-1に対する抗体にて接着は約20%抑制され、VLA-4に対する抗体にて接着は約70%抑制された。これら接着分子がリンパ球のPeyer板のhomingに重要であると推察された。 以上、PCVをへてPeyer板内にmigrationしてくるリンパ球の動態を連続して長期間記録するシステムが確立できた。このシステムを用いて、リンパ球とPCVとの初期のinteractionを正確に計測することが可能となり、リンパ球のsubsetの間でPCVへのリンパ球のstickingの様相が異なることも証明できた。
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