研究概要 |
食餌や微生物など抗原刺激に対し、腸リンパ組織は大きい役割を果たす。本研究ではその基礎的解析として、パイエル板におけるリンパ球migration過程を生体観察した。蛍光標識した腸管由来リンパ球は投与後postcapillary vanule(PCV)へ接着してゆくが、5分後よりrolling,stickingが始まり、20-30分をピークに増加するが、CD4T cellは25-50umのPCVに主に接着するが、B cellはより広範囲のPCVへ接着した。この接着における接着分子の役割を検討した成績では、α4-integrinやLECAM-1の関与が大きくLFA-1/ICAM-1も一部関与していることが示された。平成7年度は、リンパ球の接着過程のみならずその後のmigrationの過程を定量的に解析することに成功した。すなわち、バイエル板のPCVへ接着したリンパ球はその後90分の間に血管内皮を通過して(transendothelial migration),やがて間質内へmigration(interstitial migration)する様子が観察され、120分後より濾胞を取り囲む微小リンパ管(parafollicular microlymphatics)に出現がみられた。リンパ球subsetによるmigrationの相違では、CD4 T cellは上記の典型的migrationパターンを示すが、B cellは濾胞内の間質にgerminal center側へと進みリンパ管への輸送は少なかった。このmigrationに影響を与える因子の検討では脂肪とくに長鎖脂肪酸吸収はPCVへの接着のみならず、その後の間質内の移送とリンパ管内への転送を著しく促進した。リンパ球の血管内皮へのinteractionにα4-integrinは重要な役割をはたすが、transendothelial migration過程においてもα4-integrinは重要であることが示された。ただしその後の間質内輪送やリンパ管排出には影響を与えなかった。VIP(vasoactive intestinal peptide)はリンパ球の血管内皮への接着には影響与えなかったが、その後のパイエル板内のmigrationを有意に抑制した。以上の検討により、生理的条件下においてリンパ球がどのようにパイエル板へホ-ミングするかにつき、経時的in vivoにおける情報が得られ、その際に役割をはたす接着分子についても理解された。
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