研究課題/領域番号 |
06454273
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
永武 毅 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30164445)
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研究分担者 |
苑田 文成 長崎大学, 医学部・付属病院熱研内科, 助手 (50264239)
田尾 操 長崎大学, 熱帯医学研究所・感染症予防治療分野, 助手 (80187913)
宇都宮 嘉明 長崎大学, 医学部・付属病院熱研内科, 助手 (40193916)
大石 和徳 長崎大学, 医学部・付属病院熱研内科, 講師 (80160414)
力富 直人 長崎大学, 熱帯医学研究所・感染症予防治療分野, 助教授 (70175032)
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キーワード | 難治性慢性下気道感染症 / 炎症メディエーター / Interleukin-8 / 緑膿菌 |
研究概要 |
(1)ラット慢性緑膿菌性下気道感染症モデルの作成 SPFラットを用いてムコイド型緑膿菌をアガ-ビーズ法にて気管内接種し、接種後21日間持続する慢性緑膿菌性下気道感染モデルを作成することができた。このモデルにおいて肺内生菌数、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球数、およびcytokine-induced neutrophil attractant (CINC)について検討した。肺内生菌数、BALF中好中球数は菌接種後1〜3日にピークとなり、この時期に一致してBALF中のCINC1,CINC2が増加し,CINC-2がCINC-1に対し優位をしめた。また、RT-PCR法にてCINCのmRNAの発現を検討したところ菌接種1日後に最もmRNAの発現は強かった。 (2)慢性下気道感染症患者に対するステロイド剤(ベクロメサゾン)吸入療法の有効性 in vitroの実験で、ステロイド剤は緑膿菌菌体破砕上清により刺激した気道上皮由来のIL-8産生を有意に抑制することを確認した。マクロライド少量持続投与の無効な慢性下気道感染症患者2例に対し、ベクロメサゾンの吸入療法を継続したところ、患者の膿性痰、喀痰中IL-8濃度、好中球エラスターゼ濃度の低下を認めた。ステロイド剤は気道上皮由来のIL-8産生抑制を介して、気道炎症を緩和することが推察された。 (3)緑膿菌由来のIL-8産生誘導蛋白の同定 緑膿菌菌体破砕上清(SSPA)中に気道上皮を刺激し、IL-8産生を誘導する因子の存在することを発見し、この因子について生化学的に精製を試みた。この因子は分子量50-60kDの蛋白性因子と3kD以下の非蛋白性因子が存在することが判った。そこで、蛋白性因子の精製を進めた。結果的にSSPAを50%硫安沈殿で濃縮し、透析後に陰イオンクロマトグラフィー(Qカラム、MONO-Qカラム)を用いてIL-8誘導蛋白を精製した。この蛋白は分子量59kDで、活性としては気道上皮細胞のみならず、肺胞マクロファージ、好中球などでIL-8産生を誘導し、とくに肺胞マクロファージではTNFα,IL-1βを誘導した。この緑膿菌性蛋白は慢性下気道感染症患者における好中球性気道炎症におけるサイトカインネットワークに重要な役割をすると推定される。
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