研究概要 |
本年度は、運動ニューロン疾患におけるskein様封入体(SLI)、Lewy小体様ヒアリン封入体(LBHI)、Bunina小体について免疫細胞化学的、電顕的に検討した。また、孤発性運動ニューロン疾患におけるubiquitin化封入体をその形状からround inclusion(RI)としてLBHIから区別し、SLIおよびLBHIとの相互関係を明らかにすることを試みた。RIは、大部分が正円でなく、輪郭が毛羽立つなど不整であり、内部も小空胞があったり、腺維状になっていたりとかなり不均一であった。電顕的には、neurofilament、それよりやや太いフィラメント、顆粒状物質に加え、太いフィラメントの束が認められた。後者はSLIにみられるフィラメントの束とは区別できず、逆に集簇したSLIではフィラメント束の間隙にRIのものとよく似たフリーのフィラメントや顆粒状物質が存在しており、両者は密接に関係しているものと思われた。免疫細胞化学でも、RIは、neurofilament、Cu/Zu superoxide dismutase(SOD)、ubiquitin Cterminal hydrolaseのいずれも陰性のことが多く、これらが陽性のLBHIとは異なり、SLIと同様の反応を示した。すなわち、RIは“round"な形のSLIそのものである可能性が明らかとなった〔11th TMIN International Symposium:Amyotrophic Lateral Sclerosis(Tokyo,October 1995),ibid.,Elsevier,in press〕。この過程で、RIは従来neurofilament陰性であるとされてきたが、一部には電顕的、免疫細胞化学的にneurofilamentが存在することを明らかにした(ibid.,in preparation)。LBHIがCu/ZuSOD陽性であることから、Parkinson病における真のLewy小体について免疫細胞化学的検索を行い、脳乾型および皮質型Lewy小体は大部分はCu/ZnSOD陰性であるものの、一部は陽性であることを明らかにした〔第36回日本神経学会(名古屋)、4th IBRO World Congress of Neuroscience(Kyoto)〕。さらに、運動ニューロン疾患において、上位運動ニューロンの変性にnitrotyrosineすなわちNOを介する酸化ストレスが関与していることを明らかにした〔11th TMIN International Symposium:Amyotrophic Lateral Sclerosis(Tokyo,October 1995),ibid.,Elsevier,in press〕。関連する研究として、Alzheimer病の分子遺伝学、脊髄小脳変性症の蓄積物質、ミトコンドリア脳筋症などの研究でも進展がみられた。
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