研究概要 |
ウシ末梢神経の膜画分よりアルカリ抽出・WGA-Sepharoseおよびlaminin-Sepharoseカラムクロマトグラフィーによりα-dystroglycanを精製した.アルカリ分解または弱ヒドラジン分解によりO結合型糖鎖を切り出し,陰イオン交換・ゲル濾過・レクチン・逆相の各種カラムクロマトグラフィーおよび酵素処理によりその構造を解析した.各種シアル化オリゴ糖のα-dystroglycanとlamininの結合に対する阻害効果も検討した.シアル酸はDMB法により定量した.α-Dystroglycan 1 mol当たり約15molのシアル酸が検出され.そのうち約80%がN-acetyl体,20%がN-glycoryl体であった.O-acetyl体は検出されなかった.Sialidaseの効果にSiaα2-3Gal結合を特異的に切断するNewcastle disease virus由来のものとすべての結合を切断するArthrobacter ureafaciens由来のものとに差は見られず,シアル酸の結合様式はα2-3が主要なものと考えられた.Sialidaseにより中性化したオリゴ糖はゲル濾過で3.9グルコース単位(GU)の位置に主要な溶出ピークを与え,このオリゴ糖はGalβ1-4GlcNAc結合のみを特異的に切断する肺炎双球菌由来のβ-galactosidaseにより2.9GUに消化され,さらに肺炎双球菌由来のβ-hexosaminidaseにより0.8GUにまで消化され,還元末端糖はmannoseであることが判明した.肺炎双球菌由来のβ-galactosidase消化後の2.9GUのオリゴ糖は,還元末端のGlcNAc残基を特異的に認識するPVLレクチンカラムに結合し,また逆相カラムにてGlcNAcβ1-2Manの標準品と同一の位置に溶出した.よってα-dystroglycanの主要なO結合型シアル化オリゴ糖はSiaα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-2Man-Ser/Thrの構造を有するO-mannosyl型のものである.この糖鎖の非還元末端部分と同じ構造を持つ3'-sialyl N-acetyllactosamine(Siaα2-3Gal/β1-4GlcNAc)によりα-dystroglycanとlamininとの結合が阻害された.本構造はこれまで報告されていない新規糖鎖である.
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