研究概要 |
細胞は外界から種々の刺激を受けると、細胞膜受容体を介して細胞内に特異的情報を伝達する。βアドレナリン受容体刺激は、アデニレートシクレース系を介して細胞内に情報を伝達をする。われわれはすでに、心臓特異的な抑制性のGiα蛋白質が心不全および拡張型心筋症において増加することを報告しそのG蛋質を精製している。McCune-Albright syndrome(polyostotic fibrous dysplasia,cafe au lait spot,sexual precocity,hyperfuncti on of multiple endocrine glandsを特徴とする症候群)では、Gsα遺伝子第8エクソンの201番目のアルギニンがヒスチジンまたはチステインに変化していることが報告された。この疾患では重症な心不全症状を呈し、原因不明の突然死を呈する患者が多く、Gsα遺伝子の201番目のpoint mutationはこの疾患の心臓でも認められている。G蛋白質の遺伝子異常の報告はこの疾患のみであるが、特発性心筋症にもこのような遺伝子異常の可能性はある。 従来報告されているG蛋白質は細胞膜に存在しているのが通説である。本年度の研究において、心筋におけるG蛋白質のβサブユニットのうちβ3サブユニットは細胞質に存在していることが判明した。さらに心不全および心筋障害時には細胞質β3サブユニットは細胞膜にトランスロケーションする事が判明した。βアドレナリン受容体がダウンレギュレーションする際にβアドレナリン受容体キナーゼ(βARK)が活性化され細胞膜にトランスロケーションされることが報告されている。β3はβARKと結合していることが示唆される。 心筋症ハムスターにおけるβARKmRNA発現量の変化は心不全が進行すると増加していた。また心不全モデルとして、ノルエピネフリンを持続投与したラットにおけるβARKmRNA発現は1週目では増量しておらず、2週目で増加していた。この成績より心不全初期には蛋白合成は行われず、βARK、βγのトランスロケーションによってβ受容対の脱感作が起こっていると考えられた。
|