研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は、細胞の増殖、収縮遺伝子発現など多彩な細胞内プロセスに関与している。しかしながら、心筋細胞におけるPKCの役割については、未だ明確な位置づけが得られていない。特に細胞内カルシウムとPKCとの相互共役が、心筋細胞におけるカルシウムを主体とする秒単位での急速反応系と、PKCなどによる分から時間単位の慢性反応系と関連を複雑かつ不明瞭にしている。従って、生理学的状態にある心筋細胞において、PKC細胞内分布とカルシウム動態が同時に観察可能となれば、これらの問題へのアプローチが容易となることが想像される。本研究においては、ラット端単離心筋細胞を用いて、細胞内遊離カルシウム(Ca^<2+>)とPKCをそれぞれに特異的主体蛍光プローブによって視覚化できるシステムの開発を試みた。Ca^<2+>蛍光指標としてIndol、PKC指標として12-(1,3,5,7-tetramethyl-BOBIPY-2propidonyl)phorbol-13-actateを用い、倒立共焦点レーザー顕微鏡ステージ上に設置した細胞灌流システム内にて細胞を観察することが可能となった。このシステムの応用により今後、特異的レセフタ-刺激下における反応、病的環境下での信号応答の変容などについて、研究が展開することが期待される。また、固定心筋標本に対して、PKCのアイソザイム特異的な免疫染色を行うことにより、Ischemic PreconditiomihgにPKC活性化はデルタアイソザイムにおいて必要かつ十分であることを明らかにすることができた。今後アイソザイム特異的なPKC蛍光プローブの開発により、生理学的条件下においても現象の確認が望まれる。
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