研究概要 |
1.内皮細胞NO合成酵素のリン酸化による活性調節機構およびミリスチン酸による翻訳後修飾の意義 ウシ大動脈培養内皮細胞よりNOSを精製し、protein kinase C (PKC)およびcAMP dependent protein kinase (PKA)によるリン酸化について検討した。NOSはPKCおよびPKAによってリン酸化された。NOSはPKCによってその活性が抑制されたが、PKAには影響されなかった。我々は,変異cNOS遺伝子をCOS-7細胞に遺伝子導入し,血管内皮細胞cNOSのミリスチン酸による翻訳後修飾の意義について検討した.内皮細胞cNOSは細胞膜分画に存在したがミリスチン酸のないmutant NOSは細胞質分画への移行した。細胞外へのNO放出量はwild type NOSが変異NOSに比べて高値を示した。以上より、内皮細胞のNOSは細胞膜に存在し、NOを効率よく細胞外に放出することが明らかとなった。 2.内皮細胞NOSmRNAの脂質、動脈硬化による発現調節機構 ウシ大動脈内皮細胞を用いてNOSmRNAの発現調節機構を検討した。また、動脈硬化の発症に重要な酸化LDLはcNOSmRNA発現を増加させたが、LDLおよびHDLはcNOS発現に影響しなかった。さらに、酸化LDL中に増加するリゾフォスファチジルコリン(LPC)はcNOSmRNA発現を増加させた。また、動脈硬化のモデル動物である遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギの胸部大動脈におけるcNOSの発現を調べた。WHHLウサギの胸部大動脈は動脈硬化の進展に伴い内皮依存性血管弛緩反応は低下したが、cNOSmRNAの発現もcNOSタンパク質も低下しておらずむしろ増加していた。したがって、動脈硬化血管において内皮依存性血管弛緩反応が低下する理由としてcNOSの発現レベルは関係せず内皮細胞における情報伝達機構の障害が重要であると考えられた。
|